幼稚園01

依頼内容:死角のない安全な幼稚園をつくる

幼稚園を増築するにあたって、先生方の最大のご要望は「死角のない安全な幼稚園をつくってほしい」ということでした。

大切なお子様を預かるプロとして当然の依頼であり、それは必ず実現しなければなりません。

同時に、無限の可能性を持つ子どもたちが、自由な発想で楽しく学べる場でもあってほしいという思いがありました。

そこで、子どもたちの動きを事前に観察。

子どもたちの動きを実際に見ながら、安全性と楽しい仕掛けの両方を設計に落とし込めないか考えていくことにしました。

設計の要点【1】:外からも中からも見える設計

まずは最大のご要望である「死角のない安全な幼稚園をつくる」を実現できるよう、増築部分は外からも中からも子どもたちの様子が見えるように設計。

増築部分はもちろん、既存の園舎とも相互に見えるようにしています。

サッシを全面開放すると室内と外部とを一体的に利用できるようになります。

お遊戯会などのイベントの際は、内部をステージに見立てて利用します。

設計の要点【2】:安全な場所に“秘密基地”を設置

安全面が最重要であることは間違いありませんが、ここは想像力豊かな子どもたちが集う幼稚園。

ちょっと楽しいことができないかなという思いから、少し周りから閉ざされた秘密基地のような空間を設けました。

子どもたちは秘密基地や隠れ家など、狭い空間に入るのが大好きです。

そこでトンネル状の秘密基地は、監視の目がとどきやすい職員室の前に設けて安全性を担保。

実際にトンネルの空間が子どもたちに大人気となり、隠れ場所として、お店屋さんごっこのお店など、子どもたちならではの自由な発想で使われています。

人気の秘密は、先生方曰く「お母さんのお腹の中のイメージがあるのでは?」とのこと。

先生たちの間でこの空間は「お母さんのお腹」と呼ばれているそうです。

幼稚園の設計は、いい意味で子どもと設計者との戦いです。

主役である子どもたちが自由な発想で楽しく活動している場面を想像しながら、危険を排除し、必要なものを付加していく。

そんな作業が私にとって、悩みながらも楽しい時間でもあるのです。

設計の要点【3】:危険な角をなくす

安全性に関して、もう一つ提案したことがあります。

柱や壁などの角や出っ張り部分で、子どもたちが触れるであろう部位には丸みをつけて、危険性を最小限にとどめる処置を施しています。

特にサッシの「水切り」と呼ばれる部分(下記画像内、白丸の箇所)へのモルタル加工です。

通常素材のアルミがそのまま使われることが多く、冷たいだけでなく、ちょうど子どもの目の高さにありとても危険です。

以前、こうした素材の近くでケガをした話を聞いたことがあったため、安全性と温かな雰囲気を演出できるモルタル加工をご提案しました。

設計の要点【4】:園内を子どもたちが一周できる行き止まりのない空間設計

2階の廊下は元気いっぱいの子どもたちが、園内をぐるぐる一周できるようにしています。

周回ルート上には、階段を設置。

日常的に使う空間が避難経路にもなるようにしています。

使い慣れたルートであれば、万が一の際もよりスムーズに避難ができます。

また、この階段は集合写真の撮影場にもなっています。雛壇的な使い方です。

階段一つとっても先生方の柔軟な発想でいろんな活用方法があるものだと改めて感じています。